緑陰幻想詞華集vol.9『さるのこしかけ』物語としての花活け

アンソロジストの東雅夫さんが今回の『緑陰幻想詞華集』で朗読してくださったのは、宮沢賢治の『さるのこしかけ』だった。お話を何度か読んで、徐々にイメージをかたちづくっていく。

『さるのこしかけ』は子供時代に大きな群生を見たときのイメージと重なったり、
その名から連想したことともつながって、思い出のままお話の中の栗の木の虚(うろ)に
連れ込まれてしまう。

朽ちかけた木のうろを探して、
サルトリイバラをいただいて、猿にちなんで赤い藪椿も寄せてきた。
冬枯れの笹も似合いそうだ。

器は前から決めていた竹かご。猿にちなんで「ザル」。
これは金沢の能楽美術館での「緑陰幻想詞華集」の時に竹工芸家の勢司さんに作ってもらったもの。

お話に合わせてどう編んでいくのか。

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そしてこちらが生けたものです↓

賢治の物語は、空間がボカッとある。それは空の果て、青黒い闇のようだ。

小さくなって、
木のうろを抜けて、
全力で走って行く先、、、

サルトリイバラの覆った空
椿の花咲く森を下に
彼らとともに疾走していく

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仕事として花を活ける時には、お客様の文脈を大事にし、花の旬を考え、色や質感、情景をいろいろイメージしてみます。でも、花は生ものですから、注文通りの仕入れがかなわない場合もありますし、現場でやってみて、イメージ通り行かない場合もあります。一本一本皆違うので、予定はあるようでないようなものです。
そうした時、限られた時間でどうするのか。その場に臨んで発揮できる力を持っていたいと思っています。場所と素材に出会い、相互共振し、想像をいつも超えていくことが、花生けの醍醐味であり奥が深いところです。
花は遥か昔から「こころの形代」です。型や方法や技術を用いて、物語を伝えてゆくのが仕事です。作庭のダイナミズムと、一輪の投入れのダイナミズムは通じています。