TERRAIN VAGUE vol.141【暗黙知と創生神話– アイルランドと奄美から芸術を考える】渡辺真也さん 2018/9/10

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ドイツから白鳥に導かれるように、ユーラシアを渡り故郷へ回帰した渡辺真也さん。
朝崎郁恵さんの島唄に導かれ、南へ。奄美大島を舞台に新たな映画をつくりました。
昨年のTERRAIN VAGUEでは3回シリーズでは、映画『『Soul Odyssey – ユーラシアを探して』のこと、『ドクメンタ』のこと、ちょうど製作にかかったばかりの『神の唄』のこと、
連続三回お話しくださいましたが、
今回は多摩美での鶴岡真弓さんらとの展覧会のキュレーション、映画『神の唄』製作とケルトと奄美の往還をします。ケルトの石の声、他者たちの声の響き。渡辺さんの中で煌めいた閃きがあり、遠くから打ち寄せる声が数多聞こえたのだろうと思います。またヒリヒリするお話が楽しみです。
https://kaminouta.jp

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「暗黙知と創生神話– アイルランドと奄美から芸術を考える」

2018年9月1日発売予定のデザイン雑誌「AXIS」195号に、私はマイケル・ポランニーの『暗黙知の次元』について書評を寄せさせて頂きました。この本の中で、ポランニーは「私の中にあなたがいて、あなたの中に私がいる」という重要な指摘をしています。ポランニーの言う暗黙知とは、主客を超えた情の世界のことだと私は考えており、この情の世界を、奄美のシマ唄を映像化することで、美学として確立したいと考えています。

今年の6月に多摩美術大学アートテークにて開催された『はじまりの線刻画 - アイルランド・スカンジナビアから奄美群島へ』をキュレーションする過程で、アイルランドに残るニューグレンジ遺跡の巨石に刻まれた渦巻きと菱形の文様に、両界曼荼羅と類似する構造を発見した私は、ニューグレンジの巨石に刻まれた渦巻きと菱形は、神の精気を受けて懐妊し神の子を生む、という日光感精神話に基づく王墓だと考える様になりました。

アーキタイプの宝庫であるアイルランドと奄美群島には、多くの神話的世界が良好な形で保存されています。奄美大島にも日光感精神話があり、ユタの祖とされる女神、思松金(おもいまつがね)は、日光に手を射されて子を産んだとされます。アイルランドと奄美という二つの地域を、対称性の法則を用いて考えて行くことで、その両者をより深く理解することが可能となります。ニューグレンジが日光感精神話を形態化したものだと考えることで、私は難解歌とされる奄美のシマ唄『上がれ日ぬはる加那』で歌われる稲を孕ます太陽とは、女性を孕ませる男性を太陽神として描いたもので、これが恋の歌であることが読解できる様になりました。

(映画トレーラーへのリンク)
https://player.vimeo.com/video/273625044


私は奄美のシマ唄をテーマとした映画『神の唄』第1章にて、奄美の古代世界「奄美世(あまんゆ)」を描いたのですが、オープニングショットにヤドカリ(アマン)を映し、これを奄美(あまみ)の語源だとしました。奄美には、ヤドカリを人間の祖先とする考え方があり、琉球諸語であるアマン(ヤドカリ)とはオーストロネシア語であることから、アマンの言葉は台湾から広がって行ったものと考えられます。

また、バングラデシュの古代米にアマン米があります。すると、アマン米とは日光感精神話の影響下に名付けられた稲魂を宿したお米のことで、これが黒潮に乗って琉球・奄美を経由し、日本本土に齎されたものの、その後大陸からやってきた弥生文化に駆逐された可能性があります。それは、日本書紀に657年に都貨邏人の男女が「海見島」に漂着したと書かれていることから、タイのドゥヴァラヴァティー王国の人たちが奄美群島に漂着し、それが現在のトカラ(都貨邏)列島と言う名前の起源だと考えることで強化されます。

奄美の言葉で、稲のことをニニと呼びます。すると、ニニギノミコトとは稲を握った神様だと読み解くことができます。降臨するニニギに稲穂を渡したのはアマテラスでしたが、オーストロネシア語の「アマン」の音が、中国道教の影響を受けて、天(あま)や海人(あま)と習合し、伊勢の海人部(あまべ)が信仰した天照(アマテラス)や天鈿女(アメノウズメ)、すなわち神道の神々の起源になったのではないか、と私は考えています。

このトークでは、映画「神の唄」第1章の上映を行い、その背景にあるものについてもお話しします。

ユーラシア研究者であった私のヤポネシア研究はまだ始まったばかりで、これは仮説の領域に過ぎませんが、その経過報告を含めたトークとできれば幸いです。

推薦図書:マイケル・ポランニー「暗黙知の次元」ちくま学芸文庫
www.kaminouta.jp

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2018/9/10 Mon.
19時から21時。
*開場は15分前になります。
*20名程度

*料金
3000円(当日精算)お菓子つき

*申し込み
問い合わせメールホームよりお申し込みください。
hikarionsitu@yahoo.co.jp


場所
東京都千代田区西神田2-4-1 東方学会本館三階33-2号室 温室
※会場はイベント当日以外は一般に開放していませんので、ご注意ください。
https://map.yahoo.co.jp/maps?ei=UTF-8&type=scroll&mode=map&lon=139.75484163&lat=35.69789079&p=東京都千代田区西神田2丁目4-1&z=16&layer=pa&v=3
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1980年静岡県沼津市生まれのキュレーター/映画監督。ベルリン工科経済大学講師。2008〜 09 年 「アトミックサンシャインの中へ│日本国平和 憲法第9条下における戦後美術」(NY、東京、 沖縄巡回)、 16 年「ナムジュン・パイク 2020 年 笑っているのは誰 ?+?=??」(ワタリウ ム美術館)などをキュレーション。2016 年にはユーラシア大陸横断をテーマとした映画 『Soul Odyssey - ユーラシアを探して』を初監督。ベルリン芸術大学博士論文『ユーラシアを探して - ヨーゼフ・ボイスとナムジュン・パイクの生涯に渡るコラボレーション』は、現在日本語翻訳を準備中。

渡辺真也さんによる前回のドクメンタ13のまとめ→https://togetter.com/li/376868

渡辺真也さんと一緒に今回のドクメンタ14を回った池田剛介によるレビュー「別のギリシャは可能か?あるいは芸術祭への『疲れ』をめぐって」→http://realkyoto.jp/review/documenta14/

バイオグラフィー:::
http://www.shinyawatanabe.net/biography

渡辺さんキュレーションの美術展覧会
”アトミックサンシャインの中へ
「日本国平和憲法第九条下における戦後美術」”
http://www.shinyawatanabe.net/atomicsunshine/

“VOLCANO LOVERS"(2009−2010)
http://www.volcanolovers.net

ユーラシアを探して – ヨーロッパとアジアの融合を巡る ヨーゼフ・ボイスとナム・ジュン・パイクの旅
http://www.shinyawatanabe.net/wordpress/wp-content/uploads/2010/09/Expose-on-Eurasia-by-Shinya-Watanabe-ja.pdf

はじまりの線刻画 – アイルランド・スカンジナビア から奄美群島へ –
http://www2.tamabi.ac.jp/iaa/stone-rockcarvings_as_beginnings/




自然を間にコミュニティーをゆるやかにつないでいくためのガ–デンデザイン、年間のスケジュール立案ほか、その場をつかったイベントやワークショップのディレクションをしています。